今や名古屋を代表する観光資源となっている名古屋めし。
2005 年の愛知万博を機にブームが本格化したといわれます。
それに先駆けて代表的ブランドを集めた“名古屋めしストリート”として人気を博してきたのがエスカでした。
当コラムでは、名古屋めしに詳しいフリーライター・大竹敏之が、エスカに出店する人気店の店主や担当者と対談し、出店のいきさつやブレイクの経緯などを語ってもらいます。
目次
第 13 回 想吃担担面
▼「想吃担担面」を展開する明佑 代表取締役の中島三鐘さん。「エスカ店では店⾧を務めていた時期もあり、今もしばしば現場に入っています」

名古屋流の担担麺。「名古屋めし」の仲間入りも間近・・・!?
有限会社明佑 代表取締役 中島三鐘さん
1980 年、名古屋市中村区生まれ。中華料理店の経営、中華料理食材の販売などを手がける1954 年創業の明佑の4 代目。大阪のホテルや神戸の中華料理店などで勤務をした後、2009 年に明佑に入社。「想吃担担面エスカ店」の店⾧を務めた後、2012 年から現職。同店のブランディングを強化し、多店舗展開やメニューのブラッシュアップなどに取り組む。
「こんな辛いものが食べられるか!?」と怒られたことも(!)
――「想吃担担面」はエスカのお店が第1 号店なのですね
中島さん「はい。当時、名古屋駅の豊田ビルに出店していたフカヒレ専門店で、ランチメニューとして出していた担担麺が人気となり、それがきっかけでエスカさんから声をかけていただいたのです。2005 年のことになります」
――麺の専門店は御社としては初めてだったのですか?
中島さん「はい。当時はまだ担担麺は今ほど一般的ではなく、ラーメンの店だと思って来られたお客さんが『こんな辛いもの食べられるか!』と怒って帰ってしまったこともありました(苦笑)」
――この時点で、既に現在の担担麺の味は完成していたのでしょうか?
中島さん「いえ。この時から名古屋では珍しい汁無し担担麺はあったのですが、麺はまだオリジナルではなく、今ほど幅広くはありませんでした。もっと幅が広い麺に改良したいと思っていたのですが、製麺所に相談したところ、製麺機の刃から変えなければできないので一店舗分では採算が取れない、といわれました。しかし、エスカ店の後ですぐにユニモール店も出すことになって注文数が増えたので、当社専用の麺をつくってもらえるようになったのです」
名古屋人好み、ではなく本格派のおいしさだからウケた
――御社の担担麺は、まずゴマやラー油の香ばしさが特徴的です
中島さん「 『 吟醸ごま』はブレンド、精製、焙煎まで独自に行っています。粉末状のすりゴマではなく、粗いミンチ状にすることで、豊かな香りや強い甘味を引き出しています。『五香ラー油』は漢方としても使われる八角や桂皮(シナモン)、唐辛子などを一週間寝かせて漉し、辛みよりもうま味や香りのあるものに仕上げています。『五香ラー油』はお陰様でトップ・オブ・セレクションの最高賞を受賞しました。大手メーカーさんが名を連ねる名誉ある賞なのでとても光栄です」
▼「 自家製の『 五香ラー油』をはじめ調味料から手づくり。他にはない香り、コクがお客様に支持していただいている一番の理由だと思っています」

――そんなゴマやラー油を活かすのが独特の平打ち麺ですね
中島さん「平打ちの形状にも特徴がありますが、熟成発酵させてタレに負けないうま味も引き出しています」
――最初は辛さに驚くお客さんもいたとのことですが、すぐに受け入れられていったのでしょうか?
中島さん「しばらくかかりましたが、口コミで広まったり、テレビが取り上げてくれるなどして数年後にはお昼時は毎日行列ができるようになりました」
――パンチのある味わいが名古屋人の口に合った?
中島さん「名古屋の人の・・・というよりも、当時このクオリティの担担麺を食べようと思ったらホテルの高級中華料理店くらいしかなかったんです。値段もそれこそ2000 円以上が当たり前。一方、町場の中華料理店の担担麺は醤油ラーメンにゴマを加えたようなものが多かった。ホテルレベルの味が1000 円以下で食べられることで喜んでいただけたのでは、と思っています」
▼名物メニューの汁無し担担麺990 円。ミニ丼やデザートなどと組み合わせられるランチセット、ハーフ担担麺セットもある

名古屋で生まれ広まった名古屋流担担麺
――『想吃担担面』の最も特徴的なメニューである汁無し担担麺。平打ち麺の汁無し担担麺は、名古屋以外ではほとんど見られないといわれます
中島さん「本場の中国では担担麺は汁無しなんです。天秤棒で具と麺を担いで売り歩いていたことからこの名前で呼ばれるようになり、汁は大量に持ち運べないので汁無しが基本でした。平打ち麺にしたのは当社独自のアイデアで、『吟醸ごま』や『五香ラー油』を駆使した味つけも独自のものです」
――名古屋では、今やこのスタイルの担担麺が多くの店に広まっています。この地域限定でいろいろな店で食べられるのが名古屋めしの条件だとすると、これはもはや名古屋めしといえる、との声もあります
中島さん「そういっていただけるのはとてもありがたいですし、名古屋めしに入れてもらいたいなぁという気持ちはあります(笑)」
――名古屋の人はこのスタイルが他ではないことに気づいておらず、むしろ他地域ほど名古屋独自のものだと興味を持ってくれる人が少なくないようです
中島さん「名古屋にしかないから、と遠方からわざわざ来てくれる方もいらっしゃいます。場所柄、ビジネスマンのお客様も多く、転勤で名古屋を離れ、『名古屋以外では食べられないから』と名古屋へ来る度に食べに来てくれる方も。『送ってほしい』という声も多く、それに応えたいと10 年ほど前に通販を始めました。非常に好評でたくさんの方がお取り寄せくださいます」
▼地元テレビ局とのタイアップで誕生した「でら味噌担担麺」1500 円。名古屋コーチンの卵、八丁味噌を使ったスープ、肉味噌など名古屋感満点の一杯

人気店目白押しのエスカだからこそのメリット
――「 想吃担担面」は現在 6店舗。エスカに 1号店を出して以降、店舗を増やしていきました
中島さん「エスカには名古屋名物がたくさん集まっているので、うちもそのひとつと見てもらうことができる。メディアの方などからも“名古屋めしじゃないんですか?”という問い合わせがたくさんあるんです(笑)。最初にエスカに出店したことで多くの人に知っていただけて、その後お店をいくつも出すことができたと思います」
――名古屋めしを求めて足を運ぶ観光客も多いですよね
中島さん「私は中村区出身で学生時代は生活創庫(現在はビックカメラ)によく来ていたんです。当時、エスカにはちょっと暗いイメージを抱いていたので、自分がここで店を出すようになった今、観光客もたくさんいらっしゃって、明るくて活気のある場所になっているのはありがたいですね」
▼2019 年に現在の店舗に移転。席数が40 席と倍増するとともにメニューの種類も増え、ランチから夜飲みまで利用法も幅広くなった

――周りがライバル店だらけで大変な面もあるのでは?
中島さん「目標となるお店が周りにあるのはむしろありがたいことだと思っています。開店した当時はエスカの一番北側に店舗があり、同じ並びの『 矢場とん』さんにいつも大行列ができているのを見ながら“すごいなぁ”とうらやましく思っていました(笑)。でも、毎日その行列を見ているうちに、おいしいだけでなく、ブランディングも大事なんだと気づかされた。以来、コンサルタントに指導してもらったり、ロゴをはじめとするデザイン、接客教育など、外からの見た目も、内側の意識もブラッシュアップすることに力を入れるようになりました」
――今後の展望は?
中島さん「名古屋駅のエスカに店舗があることで他地域の方にも知っていただき、足を運んでいただきやすくなった。機会があれば今度はこちらが名古屋から外へ出ていきたいと考えています。その時はこの担担麺が『 名古屋発』であることをしっかりアピールしたいと思っています!」
店舗情報

四川酒家 想吃担担面
2005 年に担担麺専門店としてオープン。20 席ほどの小規模店だったが開店から数年で行列の絶えない人気店となり、名古屋に担担麺ブームを巻き起こすきっかけとなる。汁無し担担麺に汁有り担担麺、毎月替わる期間限定担担麺、店舗限定「でら味噌担担麺」など選択肢が豊富。2019 年に現在の場所に移転拡張。餃子をはじめメニューの種類が増え、17 時30 分以降はエビチリなどの人気メニューがより充実。夜飲みの店としても利用できる。
℡ 052-451-3666
11:00~22:30(L.O22:00)
【聞き手】大竹敏之
名古屋を専門分野とするフリーライター。エスカの名古屋めし推しの取り組みについては著書『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)にも詳しい。著書はこの他、『名古屋金シャチさんぽ』(風媒社)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)など。
Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。
https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/otaketoshiyuki











