今や名古屋を代表する観光資源となっている名古屋めし。
2005 年の愛知万博を機にブームが本格化したといわれます。
それに先駆けて代表的ブランドを集めた“名古屋めしストリート”として人気を博してきたのがエスカでした。
当コラムでは、名古屋めしに詳しいフリーライター・大竹敏之が、エスカに出店する人気店の店主や担当者と対談し、出店のいきさつやブレイクの経緯などを語ってもらいます。

第 11 回 鳥開総本家

名古屋コーチンは名古屋めしの中でも貴重な地産地消グルメ!
「名古屋コーチンをたくさん食べていただくことで名古屋の街もPR したい」

プログレ 代表取締役社⾧ 西村和則さん
1970 年、三重県伊勢志摩で漁師の家に生まれる。高校時代はキャッチャーとして甲子園出場経験も。名古屋の大学を中退して飲食業の世界へ。和食店で8 年間勤務した後、29 歳で独立し「鳥開名駅西口店」(現「鳥開総本家」)開店。その後、鳥を主体とした業態を各種出店。全国丼グランプリで8 回金賞受賞。全国唐揚げグランプリ手羽先部門で4 回最高金賞受賞。現在は国内・海外にFC 店含め20 店舗以上を展開する。

来店者の6 割が名古屋コーチン親子丼を注文

――名古屋コーチンの丼、手羽先が大人気の鳥開総本家。名古屋コーチンがメインのお店はエスカの中でもここだけですね

西村さん「はい。私は29 歳の時に独立して『鳥開名駅西口店』を出しました。父が漁師なのですが、だからこそ魚介類は天候に左右されて仕入れが安定しにくいと身にしみて分かっていた。そこで、焼き鳥など鶏料理メインの店にしたんです。
20 数年前の当時は、まだ名古屋コーチンは大きくPR されていなくて、せっかく愛知県産のおいしい鶏肉があるのだからこれをもっと知ってもらいたいと思って扱うことにしました」

――お客さんの一番のお目当ては名古屋コーチンの丼ですね

西村さん「お客様の6割以上がご注文くださいます。当社ではエスカ店出店以降、昼主体の店が増え、親子丼が手羽先と並ぶ二本柱のひとつになりました」

――名古屋コーチン親子丼は1690 円~。決して安いメニューではありませんよね

西村さん「最初に出したのは2008 年オープンのラシック店で1400 円くらいでした。親子丼は丼物の中でも安い600~700 円くらいのメニューでしたから、最初は驚かれましたし、当社としても恐る恐る・・・という感じでした。
しかし、ふたを開けてみると若いお客さんがこぞってこれを注文してくれた。デートでこれくらいの値段なら頑張って出せるし、親子丼は小さな頃にお母さんがつくってくれたのを食べていて親しみもある。それでいて1400 円もする親子丼ってどれだけおいしいんだろう?と興味もわく。
生卵のトッピングも興味をそそる要素。名古屋コーチンの黄身は弾力があるので、そのまま箸で持ち上げられるんです。ちょうど写真付き携帯電話が普及し始めた頃で、皆さん写真を撮って広めてくれました」

――親子丼だけでなく手羽先もグランプリを何度も受賞し、高く評価されています

西村さん「ここでもよく出ます。手羽先をつまみに一杯飲んで、〆で名古屋コーチン親子丼を注文し、何人かでシェアするというお客様も多いですね」

――親子丼をシェアするというのは新しい食べ方ですね(笑)

西村さん「おかげでエスカ店は、お昼は客数が多く、夜は客単価が高い。我が社の店の中でもバランスが理想的なんです」

▼名古屋コーチン手羽先唐揚げは、からあげグランプリ手羽先部門最高金賞を受賞。3 本840円

エスカの利用者全員が潜在的な次回来店客に

――エスカ店出店は2014 年。名古屋めしという言葉もある程度浸透していた時期ですが、業績は最初から順調だったのでしょうか?

西村さん「最初から手応えはありましたが、ちょっとずつ着実に、という感じです。お陰様で10 年以上たつ今でもずっと業績は上向きなんです。飲食店ですから何か特別なことをするというよりも、日々手を抜かず高いクオリティーの接客、調理をご提供することを大切にしています。
加えて、最近はSNS でのPR にも力を入れています。こまめに情報発信している店舗は数字にもそれが反映されているので、今後もしっかり取り組んでいきたいと思っています」

▼「エスカを歩いている人の多くは名古屋めしが目的。これほど名古屋めしの店が一箇所に揃っている場所は他にありませんから、お客さんにとってはとても便利です」

――エスカ店以降、他地域での出店も増えています。エスカ出店は御社にとって飛躍のきっかけになったということでしょうか?

西村さん「それは間違いありません。エスカ全体で流動客が多いのが他の立地との一番の違い。ざっとひと回りしてから入る店を決める方も多い。その時は他のお店に入っても、『鳥開っていう名古屋コーチンのお店もあるんだな』と気に留めてもらえるだけでも次回来店していただける可能性につながります。店名を知ってもらえるというだけでも大きな効果があります」

――ブランド全体の知名度アップにつながるわけですね

西村さん「東京のディベロッパーさんと話していても、必ずエスカ店が話題に上る。名古屋に飲食店のリサーチなどに来る時、新幹線を降りてまずエスカを見て歩く。その時に店の前に行列ができていれば当然印象はグッとよくなる。エスカ店を出したおかげで、名古屋以外からの出店依頼が格段に増えました」

▼テイクアウト需要もグループの中でとりわけ高い。手羽先や唐揚げ、丼や弁当など種類も豊富

名古屋めしの中で地元食材を必ず使うのはコーチン料理だけ

――名古屋めしの中で名古屋コーチンの可能性は?

西村さん「名古屋めしはたくさん種類がありますが、地元の食材でなければつくれない食べ物はあまりありません。その点、名古屋コーチンは愛知県だけで生産されるブランドですから、これを使うことで地産地消にもつながります。これは他の名古屋めしにはない大きな強みです」

――外国人観光客にも喜ばれそうです

西村さん「外国人観光客の方たちにとっては、日本で牛といえば神戸牛なんです。これは10年以上前から神戸がPR に力を入れてきた成果でもある。最近は鶏=名古屋コーチンという認識も広まりつつあるようで、この認知度をもっと高めていきたい」

――名古屋コーチンは国内第1 号のブランド鶏ですから信頼性もありますね

西村さん「県による認定制度があるので安全安心でもある。生産量が限られますが、当社は⾧く扱ってきたからこそ安定して仕入れられる。他社が簡単に売り出せないという点も、当社にとっては強みになります。ブランド名に『名古屋』とついているので、名古屋コーチンを売ることで名古屋という街もPR していきたいですね!」

店舗情報

鳥開総本家 エスカ店
ランチタイムは毎日行列ができる大人気店。名古屋コーチン親子丼、尾張とりめし、唐揚げ定食などのごはん物から、手羽先、鶏どて味噌串かつなどの一品料理まで鶏料理が多彩に揃う。昼の食事はもちろん、夜の飲み利用にも便利。
Tel. 052・454・3350
11:00~22:00

【聞き手】大竹敏之
名古屋を専門分野とするフリーライター。エスカの名古屋めし推しの取り組みについては著書『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)にも詳しい。著書はこの他、『名古屋金シャチさんぽ』(風媒社)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)など。
Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。
https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/otaketoshiyuki