今や名古屋を代表する観光資源となっている名古屋めし。
2005 年の愛知万博を機にブームが本格化したといわれます。
それに先駆けて代表的ブランドを集めた“名古屋めしストリート”として人気を博してきたのがエスカでした。
当コラムでは、名古屋めしに詳しいフリーライター・大竹敏之が、エスカに出店する人気店の店主や担当者と対談し、出店のいきさつやブレイクの経緯などを語ってもらいます。
第 12 回 風来坊

“手羽先=名古屋めし”とエスカに出店して実感
「『風来坊』を知らなかった人にも利用していただけるのが、エスカに出店して一番よかったことです」
風来坊 マネージャー 中山真さん(右) エスカ店 店⾧ 辻井正人さん
風来坊のれん分け企業に所属。中山さんは1984 年生まれで2010 年入社。2019 年にエスカ店店⾧を務め、現在はマネージャー。辻井さんは1975 年生まれで学生時代のアルバイトから社員に。2022 年からエスカ店店⾧を務める。同社は他に一宮店、プリンセス店、東京品川店、伏見店、若宮店、名駅新幹線口店などを運営する。
昼から「手羽先とビール!」はエスカ店だけ
――名古屋名物・手羽先唐揚げの元祖として知られる「風来坊」。国内外に約60 軒を展開します。その中でもエスカ店はランチ営業している貴重な一軒ですね
中山さん「はい。『風来坊』は手羽先がメインの居酒屋なので、基本的に夜営業。ランチ営業しているのは、エスカ店と伏見店の2 軒だけです。伏見店では昼は手羽先を出していないので、昼から手羽先を食べられるのはエスカ店だけなんです」
――それはますます貴重ですね。エスカは商業施設なので昼からの通し営業をする必要があるのですね
辻井さん「そうなんです。一日中手羽先を揚げ続けているので現場のスタッフは大変です(笑)」
――お昼はランチタイムだけのセットや定食がありますね
辻井さん「手羽先やどて煮を合わせたランチセットや名古屋コーチンのひつまぶしなど7 種類を用意しています。手羽先がついているメニューほど人気が高いです」
――お昼から手羽先とビールというお客さんもいらっしゃいますか?
中山さん「昼飲みのお客様は多いです。ランチのセットはお得なので『ごはんはいらないです』と言って、手羽先、どて煮をつまみに飲む方もいらっしゃいます(笑)。出張らしいビジネスマンの方々は時間にかかわらず飲んでいってくださいます」
▼手羽先の唐揚げは昭和30 年代、「風来坊」創業者が考案。当時は主に飼料用に使われていた部位の手羽先を活かしてたちまち名物となり、今や名古屋めしを代表する料理のひとつに

「さくっと飲み」はエスカ店ならでは
――現在は約80 席と比較的広い店舗ですが、もともとはエスカ内の別の場所での出店だったそうですね
辻井さん「はい。2011 年にオープンした時は30 席ほどの小さな店舗でした。お客様が『相席でもいいから』と引っ切りなしにご来店されて、常に満席でした。そこで8 年ほど営業した後に今の物件が空いたので引っ越ししました」
――すぐ近くの地上に超大型店の「 風来坊名駅新幹線口店」があり、同じくらいの時期にオープンしていますが、お客さんの取り合いにはならないのですか?
中山さん「名駅新幹線口店はご予約のグループ、しっかり飲んで食べたい、という方が多く、利用の傾向が違うのでまったく関係ありません」
辻井さん「エスカ店はご予約対応をしていないのです。グループでの急なご利用もあるし、お客様の流れが読めないので、いらっしゃった順に入っていただくしかないんです。でも、エスカ店に入れない時はすぐ近くの名駅新幹線口店をご案内できるので、お客様を取りこぼさないメリットの方が大きいです」
中山さん「今の店舗に移って1 年後にコロナ禍になってしまい、当時は大変でしたが、今では完全に戻りました。業績はずっと伸びていて、今はコロナ禍前を上回っています」
――他の「風来坊」の店舗とは、お客様の層や利用の仕方に違いがありますか?
中山さん「他の店舗はビジネスマンの方が多いですが、エスカ店は女性や若い方、ビジネスマン、外国人とあらゆる層の方にご利用いただいています。キャリーケースを引いている旅行者も多い。ビジネスマンは、新幹線に乗る前やお買い物のついでに30 分~小一時間程度、さくっと飲んで行かれる方が多いですね。
エスカに出店してから15 年以上たつので、東京や大阪からのリピーターさんも増えています。『名古屋に来たらここで』と決めて来て下さるのでありがたいですね」
エスカは名古屋めしの場所。「風来坊」を知らない人も来てくれる
――「風来坊」の手羽先は「名古屋めし」という言葉が生まれるずっと前から名古屋名物として親しまれてきたわけですが、「名古屋めし」として認知されることをどのように感じていらっしゃいますか?
辻井さん「もともと『名古屋めし』という言葉は特に意識はしていなかったんですが、エスカに出店してから、うちの手羽先も名古屋めしのひとつなんだ、と思うようになりました」
中山さん「エスカで名古屋めしを食べることが目的で、何軒も回るうちの一軒として立ち寄ってくださる方も少なくありません。皆さん名古屋めしのガイドブックを見ながら回っていらっしゃいますからね。一箇所にこれほどいろんな名古屋めしの店が集まっているところは他にない。
お客様にとっては、エスカは“名古屋めし”の場所なんだな、と感じます。中には『風来坊』のことを知らずに、『行列ができているから入ってみよう』というお客さんもいますから。
他の店では皆さん、風来坊の手羽先を食べよう!と思って来て下さるので、こういう利用の仕方はエスカ店ならでは。でも、知っていただける機会になるのでありがたいです」
辻井さん「せっかくだからいろんな名古屋めしを食べたい、とエスカの中ではしごをして、うちでは数人で手羽先一人前を分けて食べるという方も。『風来坊』のお客様は平均1 人あたり2人前は手羽先をご注文されるので、1 人1~2 本だけというのはエスカ店でしかない食べ方です(笑)」
▼「 手羽先のいろいろな食べ方」を写真で紹介。小骨が多く食べにくいと思われていた手羽先を、簡単・きれいに食べられるとイメージチェンジさせたのも「風来坊」の大きな功績

中山さん「あとはテイクアウトが無茶苦茶多い。店一軒分くらい売れます(笑) ランチを食べて帰りにもう一度立ち寄ってテイクアウトしていかれる方も。知り合いに頼まれたからと30~40 人前買っていかれる方とか、差し入れ用にと大量に買われるイベントの関係者の方とかも。
他の店ではテイクアウトは売上の10%以下くらいですが、エスカ店は売上の1/3を占めています。これも立ち寄りやすい名古屋駅だからこそだと思います」
――手羽先のこれからの可能性は?
中山さん「まだまだ伸びるポテンシャルはあると思っています。今年はアジア・アジアパラ競技大会があるので国内外から名古屋へ訪れる人も多いでしょうし、将来的にはリニアも開通して人の行き来も増える。味つけもパンチがあって記憶に残る。特に海外の方に向けては、鶏肉は宗教的な理由で食べられないということがあまりないのが強みになります。海外のサイトに私たちも知らないうちによく紹介されているんです(笑)」
辻井さん「他の名古屋めしも含めて、手羽先をもっと盛り上げていきたいですね!」
店舗情報

風来坊 エスカ店
エスカ内3 本の通路のうち真ん中の通路の南(新幹線口から降りると左側)の突き当たり。
他の「風来坊」にはないランチメニューを取り扱う。ランチセットの他、みそカツ定食、刺身・えびフライ定食、名古屋コーチン親子丼、名古屋コーチンひつまぶしなど。80 席と席数も豊富で、ランチタイムから夜までにぎわいが途切れない。予約は不可なので注意を。
Tel. 052・459・5007
11:00~22:00(21:30 L.O)
【聞き手】大竹敏之
名古屋を専門分野とするフリーライター。エスカの名古屋めし推しの取り組みについては著書『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)にも詳しい。著書はこの他、『名古屋金シャチさんぽ』(風媒社)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)など。
Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。
https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/otaketoshiyuki












