今や名古屋を代表する観光資源となっている名古屋めし。
2005 年の愛知万博を機にブームが本格化したといわれます。
それに先駆けて代表的ブランドを集めた“名古屋めしストリート”として人気を博してきたのがエスカでした。
当コラムでは、名古屋めしに詳しいフリーライター・大竹敏之が、エスカに出店する人気店の店主や担当者と対談し、出店のいきさつやブレイクの経緯などを語ってもらいます。

第9回 若鯱家

▼「若鯱家」社⾧の高橋雅大さん

「『カレーうどん=名古屋めし』として地域の食文化に貢献したい」

若鯱家 代表取締役社⾧ 高橋雅大さん
1983 年、名古屋市生まれ。高校生の頃から父親が社⾧を務める若鯱家の生産部でアルバイトをする。愛知学院大学卒業後の2006 年、若鯱家入社。営業職などを経て2011 年に副社⾧、2025 年に代表取締役社⾧に就任する。学校や各種団体などでの講師などを務めるなど、社外の社会貢献活動にも熱心に取り組む。

名古屋で独自の進化を遂げたカレーうどん

――カレーうどんが名古屋めしのひとつ、というのは他府県人にとっては意外かもしれません。しかし、全国ではカレー風味のあんかけうどんが一般的なカレーうどんなのに対し、名古屋ではスパイシーかつポタージュのような優しいとろみのカレールゥに極太麺を合わせるという独自のスタイルに進化しました。これはもう堂々たる名古屋めしのひとつといえると思います

高橋さん「当社はもともと主にショッピングモールに出店していたので、東海3 県のお客様からはよく見かけるカレーうどんの店、という認知はあったと思います。それが、2000 年代以降、県外から来た方が『こういうカレーうどんもあるんだ』ととらえて、徐々に名古屋独自のものだと思ってもらえるようになってきた。
ちょうどその頃から店舗数の拡大よりも質を高め、名古屋の食文化に貢献したいという思いを抱くようになり、名古屋めしという言葉も意識するようになりました。ただし、我々が『名古屋めしです!』というのではなく、皆様がどう思っていらっしゃるかが大切だと思っています」

――エスカでの出店はちょうどそのタイミングだったわけですね

高橋さん「はい。2005 年4 月オープンなのでちょうど昨年20 周年を迎えました。先のような思いを社内外に発信していこうと思っていたところだったので、ブランディングを進めていく上で大きなきっかけとなりました」

エスカ店など一部の店舗限定の映えメニューも

――ショッピングモール内の店舗とは何か違いはありますか?

高橋さん「エスカ店とセントレア、東山動植物園内の店舗はアンテナショップと位置づけています。中でもエスカ店は当社の中で最もコンパクトな店舗ということもあり、カレーうどん専門店であることをより強く打ち出しています。ショッピングモールの店ではそばや天ぷらの盛り合わせなどもあるのですが、ここではカレーうどんのトッピングバリエーションと手羽先、味噌串カツなどの名古屋めしなど、品数を半分ほどにしぼり込んでいます。カレーうどんの売上比は全体で約45%のところ、エスカ店は約67%となっています」

▼「カレーうどん一杯で勝負できる。それが若鯱家の最大の強みです」

――メニューをしぼり込む一方で、他にはない商品もありますね

高橋さん「金シャチカレーうどんですね。大きなエビフライ2 本を名古屋城の金の鯱に見立てています。これは現在、エスカ店、中部国際空港店、イオンモールナゴヤドーム前店、錦店の4 店舗のみの限定メニューです。SNS 映えするので観光のお客様に特にウケています」

――店舗によって客層にも違いがありそうですね

高橋さん「お子さんが小さい時は東山動植物園やアピタの店で、少し大きくなったらイオンで、ビジネスマンになったらエスカで、家族を持ったらまたアピタに戻って・・・とどんなシーンでもどんなお客様にもご対応できるようにしています。そのためにも様々な立地に出店して幅広いシーンでご利用いただくことが大切なんです」

15 分に1 度流れる「ちゅるちゅるうまうま♪」のCM ソング

――エスカ店はオープン当初から業績好調だったのでしょうか?

高橋さん「周りは有名なお店ばかりですから、そこに割って入るのはなかなか大変でした。
それでも他社にない強みだったのが電波での発信。『ちゅるちゅるうまうま♪』のCM ソングは当時既にこの地域の人にはおなじみだったので、これを活かしてブランディングを強化しました。全店舗での取り組みで、基本的にジャズをBGM で流しているのですが、15 分に1 回、店内でCM ソングを流しているんです。
我々の目標は、お客様を超えた『ファン』になってもらうこと。推し活していただけるようなファンを増やすことが持続可能な経営にもつながります。その一環として3 年前から『でらます』(名鉄観光によるアイドル育成シミュレーションゲーム『 アイドルマスター』とのコラボ企画)に参画しているのですが、本当にたくさんの方が並んでまで来てくれる。こんなふうに推される対象になれるようファンを増やしていきたいです」

▼通常はBGM としてジャズが流れ、毎時0 分・15 分・30 分・45 分に「ちゅるちゅるうまうま♪」のCM ソングが流れる

社内コンテストや研修で味、接客の質を高める

――そのためには何よりカレーうどんのおいしさが重要ですね

高橋さん「その通りです。当社では麺道場という教育があり、月に一度4 名くらいの社員をリストアップして実技や筆記などの研修を集中的に行っています。また、4 年ごとにカレーうどんコンテストと接客ロールプレイングコンテストを行い、調理、接客両面でブラッシュアップを図っています。当社のカレーうどんはこの研修やコンテストで鍛えられ、またその社員が店舗で教育して許可を出したスタッフしか調理できないんです」

――カレーうどんの名古屋めしとしての可能性は?

高橋さん「エスカ店は実は地元のお客様も多い。私はこれを伸びしろととらえていて、カレーうどん=名古屋めしともっと知っていただきブランド価値を高めることができれば、県外や海外のお客様にももっと来ていただくことができる。今年はアジアの人たちに向けて専門的にSNS 発信をしていこうと計画しています。
一方で地元の人にもより愛される存在でありたい。高校で授業をすることもあるのですが、『若鯱家のカレーうどんを食べたことありますか?』と聞くと手を挙げてくれるのは半分くらい。ここも伸びしろです。どうやってブランディングすれば彼らに食べてもらえるのか? 外の人と地元の人、双方からの評価や期待値を高いレベルで融合させて初めて本当のブランドになる。そのためにも名古屋めしとしてのカレーうどんの立ち位置をより高め、活かしていきたいと思っています」

店舗情報

若鯱家エスカ店
愛・地球博の開催で名古屋めしが俄然注目度を高めた2005 年4 月にオープン。ショッピングセンター内の店舗と比べて品数をしぼり込んでいるとはいえ、味噌串カツ、手羽先、牛すじどて味噌煮など名古屋めしメニューが充実。これらとカレーうどんを組み合わせたセットも人気が高い。名物カレーうどん1180 円、金シャチカレーうどん2240 円
Tel. 052-453-5516
11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~22:00(L.O.21:15) ※土日祝は通し営業

【聞き手】大竹敏之
名古屋を専門分野とするフリーライター。エスカの名古屋めし推しの取り組みについては著書『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)にも詳しい。著書はこの他、『名古屋金シャチさんぽ』(風媒社)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)など。Yahoo ! ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。
https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/otaketoshiyuki