今や名古屋を代表する観光資源となっている名古屋めし。
2005 年の愛知万博を機にブームが本格化したといわれます。
それに先駆けて代表的ブランドを集めた“名古屋めしストリート”として人気を博してきたのがエスカでした。
当コラムでは、名古屋めしに詳しいフリーライター・大竹敏之が、エスカに出店する人気店の店主や担当者と対談し、出店のいきさつやブレイクの経緯などを語ってもらいます。

第7回 ひつまぶし 名古屋 備⾧

備⾧ホールディングス 代表取締役社⾧ 鈴木博さん

1959(昭和34)年、愛知県刈谷市生まれ。大学在学中は旅行ツアーを企画するなど学生起業家として活躍。卒業後は九州、名古屋のうなぎ専門店で11 年間修行を積む。1992 年に独立し愛知県丹羽郡大口町に「備⾧」開業。2005 年にラシックに「ひつまぶし 名古屋 備⾧」を出店し、以後多店舗展開を果たす。現在、名古屋、東京、大阪、福岡などに12 店舗を出店する。

ひつまぶしを日本中に広めたい!の思いで出店

――今や全国に12 店舗を展開する「ひつまぶし 名古屋 備⾧」(「 鰻ひつまぶし備⾧」など一部異なる店名の店舗もあり)。2008 年にオープンしたエスカ店は4 号店だったのですね

鈴木さん「愛知県大口町の本店ではうなぎ以外のメニューも提供しているのですが、ひつまぶしを日本中に広めたい!という思いから、2 号店以降はひつまぶし専門店として出店しています。『ひつまぶし 名古屋 備⾧』と店名に料理名と地名を入れたのも、名古屋名物だと伝わりやすくするためです。
名古屋・栄のラシック、東京の銀座に出店した後、名古屋で観光客がたくさん来てくださるエスカに4 つ目の店舗を出すことにしました」

▼大学卒業後にうなぎ専門店で修行を積んだ鈴木さん。エスカ店オープン当時は自ら焼き場に立ってうなぎを焼いていた

――オープン当初から業績は順調だった?

鈴木さん「最初から予想以上でしたが、本格的に人気に火が着いたのは半年ほど経ってから。いつもお店の前にお客さんが並んでいるので、評判になって知名度も高まっていったと感じます」

――現在でも、お店の前の行列はエスカの中でもひときわ目立ちます

鈴木さん「うなぎは焼きたて、ごはんは炊きたてが一番おいしい。少々お待ちいただきますが、うなぎは注文を受けてから生から焼き、ごはんは4 升炊きの釜であえて2 升ずつ炊き、営業時間中はずっとその一番おいしい状態でご提供できるようにしています」

ひつまぶしを食べることが若者のファッションに

――お客さんの傾向や利用法など、エスカ店ならではの特徴はありますか?

鈴木さん「名古屋の方が、東京などからのお得意様を接待で連れてきてくれるケースが多い。ひつまぶしの食べ方もお客さん自身が説明してくださっているのでコミュニケーションのきっかけにもなるし、接待にふさわしい高級感もあるので便利にご利用いただけるようです。
あとはお持ち帰りが非常に多い。新幹線改札まで1 分ですからご購入いただきやすく、わざわざ途中下車してお買い求めくださる方もいらっしゃいます」

――並んでいるお客さんの中には若い人も多いですね

鈴木さん「東京のうなぎ屋さんは年配のお客さんが中心なんですが、うちは若い方も多くて、東京のお得意さんを連れてくるとびっくりされます。うちに来てくれる若い人はひつまぶしを食べることをファッションのひとつだととらえてくれている。若者にとっては決して安い食事ではありませんが、ちょっと頑張って食べたいもの、行きたい店と思ってくれていると感じます」

――2000 年代以降、名古屋めしの人気店の出店が増えてきたエスカですが、ひつまぶし専門店の御店が加わったことで「名古屋めしストリート」の充実度がグッと高まった感があります

鈴木さん「女性2 人連れのお客さんなどが、鉄板スパゲッティや小倉トーストを食べて、天むすを買って、さらにうちに来てくれたりする。エスカで名古屋めしを食べること自体が目的になっているんですね」

ひつまぶしを出す店が増えているのが無茶苦茶うれしい

――ひつまぶしの知名度、普及度がより高まるきっかけにもなったと感じます

鈴木さん「最初に銀座に出店したころは、東京では『ひまつぶし?』なんて勘違いされることもありましたから(苦笑)。それが今では東京のうなぎ屋さんが『 うなぎは地焼きが一番だ』と言ってくれたり、九州でひつまぶしを出しているお店があったりする。エスカ内でもひつまぶしを出すお店が増えました。私はこれが無茶苦茶うれしいんです」

▼名古屋では、強火の遠火をうなぎにあてる“地焼き”が基本。中はふわっ、皮はカリッと焼き上がる。この焼き方があるからこそ、うなぎを細かく刻み、最後はダシをかけるひつまぶし独特の食べ方でも食べ応えが損なわれない

――ひつまぶしはもちろん、御店にとってもエスカ店はジャンピングボードになったのでは?

鈴木さん「ありがたいことにエスカ店以降、次から次へ出店要請が舞い込むようになりました。エスカの担当者さんには足を向けて寝られません(笑)」

――店舗を増やすには職人の育成も欠かせませんね

鈴木さん「『 うなぎの伝統文化の伝承』が我が社の経営理念。後生に伝えていくためにも若い職人を育てたい。そこで2024 年4 月に 『名古屋うなぎ大学』を開校しました。観光客向けの体験プログラムと、プロ向けの育成プログラムがあり、技術を伝えていきたいと考えています」

――ひつまぶしにはまだまだ可能性がある?

鈴木さん「蒲焼きとごはん、そこに薬味、だしを加える三通りの食べ方を楽しめるのがひつまぶしと考えると可能性はさらに広がります。うなぎと牛、うなぎと豚、うなぎと鶏・・・などの組み合わせにうちのタレで味つけをすれば絶対においしくなる。これを世界に広めたい。今、海外のパートナー企業とひつまぶしと名古屋名物の店を出せないかとも考えています。味噌おでん、味噌煮込みうどん、どてなど、ひつまぶしをはじめ名古屋の食をいろいろな国の人たちに食べてもらいたいですね!」

店舗情報

▼営業時間中は行列が絶えず、若者、女性客の姿も目立つ

ひつまぶし 名古屋 備⾧ エスカ店
行列が絶えないエスカ内でも屈指の人気店。うなぎひつまぶし3980 円から究極うなぎひつまぶし1 万1050 円までひつまぶしだけでも多彩なバリエーションがあるのは専門店ならでは。⾧焼、白焼、肝わさ、うざく、うまきなどおつまみメニューも豊富で、お酒と合わせて楽しむのもいい。
Tel. 052・451・5557
11:00~15:00(L.O14:30)、17:00~22:00(L.O21:00)

【聞き手】大竹敏之
名古屋を専門分野とするフリーライター。エスカの名古屋めし推しの取り組みについては
著書『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)にも詳しい。著書はこの他、『名古屋
金シャチさんぽ』(風媒社)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)など。
Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/otaketoshiyuki