今や名古屋を代表する観光資源となっている名古屋めし。
2005 年の愛知万博を機にブームが本格化したといわれます。
それに先駆けて代表的ブランドを集めた“名古屋めしストリート”として人気を博してきたのがエスカでした。
当コラムでは、名古屋めしに詳しいフリーライター・大竹敏之が、エスカに出店する人気店の店主や担当者と対談し、出店の経緯やブレイクまでの経緯などを語ってもらいます。

第5回 青柳総本家

青柳総本家 代表取締役社⾧ 後藤稔貴さん

青柳総本家代表取締役社⾧。1989( 平成元)年生まれ。大学卒業後、一般企業で営業職を務めた後、2017 年に青柳総本家入社。コロナ禍の苦境下でケロトッツォを大ヒットさせるなどしてV 字回復に導く。2024 年に同社6 代目社⾧に就任。DJ としても活動し、和菓子とクラブをコラボしたイベント「あんこマンナイト」などを手がける。

▼明治12 年創業の和菓子の老舗の6 代目当主に34 才で就任した後藤稔貴さん。「当社はもともとチャレンジ精神あふれる社風。トレードマークの柳に飛びつくカエルも挑戦する姿を現しているんです」

開店当時は喫茶店だった(!)

――「青柳ういろう」で知られる青柳総本家。エスカが開業した1971 (昭和46)年当時から出店しているのですよね

後藤さん「最初は『喫茶フルール』で出店したんです。他にメキシカンレストランや高級喫茶など、飲食事業も幅広く手がけていた時期でした。ういろうもよく売れて、当社にとっては“何をやっても当たる”時代でした。1950 年代には洋菓子製造にも乗り出していたので、喫茶フルールではケーキやパフェなどのスイーツも出していたようです。現在の店舗の裏までぶち抜きだったと聞いています。ただし、私の父が中学生の頃でしたので、社内でも当時のことを詳しく知る人間がいないのです。喫茶をいつ閉店したかも定かではないのですが、現在のような販売専門の店舗にリニューアルしてからも随分⾧いと思います」

――名古屋のういろうと新幹線はかかわりが深いですから、新幹線口直結のエスカでの出店は必然ともいえますね

後藤さん「1964(昭和39)年の東海道新幹線開通でういろうを車内販売し、ういろう=名古屋名物の知名度が高まりました。それもエスカ出店の理由のひとつだったのかもしれません」

▼喫茶フルール併設店だった当時の店頭風景(青柳総本家社史より)

エスカ店はういろうを買うにはぴったりの店

――2005 年の愛知万博当時のことは覚えていらっしゃいますか?

後藤さん「私は高校生だったので仕事には携わっていないのですが、万博会場でういろうを販売し、とんでもなく売れたと聞いています。もちろんエスカの店舗でもよく売れました」

――「愛知万博の効果は大きかった!」とは名古屋めし、名古屋名物関連のお店や企業は皆さん口をそろえます。青柳総本家、そしてういろうにとっても大きな追い風になったということですね。エスカ店の売れ筋、お客様の傾向に特徴はありますか?

後藤さん「会社全体で売上の6 割以上をういろうが占め、ここでもやはりういろうの売れる比率が高い。近年は一口サイズの需要が高まっているのですが、エスカ店は従来の棹(棒状のタイプ)の人気が高いのも特徴です。名古屋に来たら最後にここでういろうを買う、と決めて立ち寄ってくれる他県のお客様も多いですね。
いろんな商品を集めた土産物店は、選ぶ楽しみがある一方で目移りするし混み合って購入が大変ですが、ここなら当社の商品のラインナップが豊富だし、ゆったり見て選べますからね。また、ういろうは重くてかさばるので、新幹線で帰路に就く直前に買えるエスカ店はういろうを買うにはぴったりなんです(笑)」

高まる名古屋めしの店同士の一体感

――近年は名古屋めしの認知度も高まっていますが、ういろうもその中のひとつに挙げられます

後藤さん「私としてはあまり意識はしていません。名古屋めしといえば味噌カツや味噌煮込みうどんなど、飲食業のメニューというイメージが強いですよね」

――「名古屋めし=名古屋のご当地グルメ」と考えれば、ういろう、⿁まんじゅうなどの和菓子もここに含まれます

後藤さん「私自身も名古屋めしというカテゴリーにまとめられることには違和感はありません。味噌煮込みうどん、手羽先、あんかけスパゲッティなどの人気店と一緒に地方の百貨店の催事に出店することもありますし、お互いに仲がよくて横のつながりもある。昔と比べると、名古屋めしのカテゴリーの中で一体感が出てきたと感じます」

コラボ企画でエスカ店に大行列!

――近年は様々なコラボでも話題を集めていますね

後藤さん「2021 年に初音ミクとのコラボでねぎ味とピスタチオ味のういろうを販売したのをはじめ、ドラゴンクエストウォークのスライムういろう、ウルトラマン、新世紀エヴァンゲリオン、アニメのウマ娘、美少女戦士セーラームーン、歌手の浜崎あゆみさん、ポケモンなど・・・。パッケージをオリジナル仕様にするだけでなく、限定商品を一から開発するケースもあり、ご好評いただいています」

――中でも大ヒットしたのが2022 年のスライムういろう。エスカ店には連日⾧蛇の列ができて、ういろう、ひいては名古屋の食への関心の高さを可視化しました

後藤さん「ネット予約でも店頭でも連日完売でした。販売初日、『ドラゴンクエスト』のテーマ曲に合わせてシャッターを開けると、100 人以上のお客様が待ち構えていて、スマホのシャッター音が鳴り響きました。あの瞬間は、驚きと喜びで震えました。あれほどういろうが注目を浴びて、競い合うように買ってくださるなんてこれまでにないできごとでした。道行く人たちも『どうして青柳ういろうの店にこんなに行列ができてるんだ?』と驚いていた様子でした(笑)」

――エスカ店では店舗をまるごとコラボ仕様の装飾にするなど、コラボする上で重要な拠点になっていますね

後藤さん「店の規模、アレンジの自由度、お客様にとってのアクセスのよさ、利用する方々の幅広さなど、様々な面でエスカ店が一番効果的にPR できる。加えて、行列ができた際に混乱しないように交通整理してくれたり、エスカさんがサポートしてくれるのもこちらとしては安心感がある。やりやすい上に効果も大きいので、重点的にPR するならここしかない、となるんです」

――コラボによってういろうの可能性も広げられそうでしょうか?

後藤さん「名古屋のういろうを食べたことがなかった人に知っていただくきっかけづくりになる、と感じています。ういろうってやっぱりおいしいんです。クセが強いわけではなくて、誰が食べてもある程度以上の評価は得ることができる。思い込みで敬遠している人にも、一度食べていただければマイナスイメージを払拭してもらえるはず。そういう方たちに関心を持っていただくにはとても有効だと思います」

抹茶ういろうはフランス人にも好評(!)

――近年は海外の方にういろうを食べてもらう試みにも取り組んでいるそうですね

後藤さん「アジアやヨーロッパなどいろんな国へういろうを持ち込んで、試食をしてもらい、意見を聞いています。アジア諸国では米を原料とする菓子も少なくないので、比較的抵抗なく食べていただきやすい。ただ日常的なおやつが多いので、名古屋のういろうのようにお土産商品にふさわしい価格で売るには何かこれまでにない戦略が必要です。
意外と反応がよかったのがフランス。特に抹茶ういろうは『おいしい!』と感動してもらえました。行く行くは海外でういろうを売りたいと思っています。でもそのためにはこれまでにないういろうの開発が必要だと感じています」

――海外進出の足がかりとして、名古屋の店舗でもインバウンドのお客さんをつかみたいですね

後藤さん「その可能性があるのは大須本店、そしてこのエスカでしょう。ただし、ういろうに限らず名古屋めしを海外の方たちの間でさらに盛り上げるには、当たり前のことですが名古屋にもっと来ていただくしかない。名古屋めしは特徴があってもちろんアピールしやすいですが、それだけじゃなく若い世代を中心に伝統工芸も含めて幅広く連携し、観光につなげられれば。それができれば、名古屋って面白い街だな、食も魅力があるな、と思ってもらえるはずです!」

店舗情報

青柳総本家エスカ店
定番のういろうから一口ういろう、カエルまんじゅうなど、青柳総本家の和菓子をバラエティ豊かに取り揃える。すべての商品が通路に面してディスプレイされているため、視認性が高く商品を選びやすい。アニメなど様々な人気コンテンツとのコラボ企画の際は、店舗ごとコラボ仕様のディスプレイになることもあり、商品も店舗もSNS 映えすると多くのファンが殺到する。
TEL. 052・452・2002
9:30~20:30

【聞き手】大竹敏之
名古屋を専門分野とするフリーライター。エスカの名古屋めし推しの取り組みについては著書『間違いだらけの名古屋めし』(ベストセラーズ)にも詳しい。著書はこの他、『名古屋金シャチさんぽ』(風媒社)『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(リベラル社)など。
Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。
https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/otaketoshiyuki